「第1章 医療機関で発見するHIV感染症」では、一般医療機関におけるHIV感染症の早期発見に焦点をあて、HIV検査を行うべき診断契機とHIV感染を疑うべき罹患患者にみられる手掛かりを中心に解説します。

日本のHIV感染者の新規報告数は年々増加傾向にあり、しかも報告例のうちの約3割はエイズを発症後に診断されているのが現状です。
近年、HIV感染症の治療法が確立したことで、予後の著明な改善がみられていますが、エイズを発症した場合にはエイズに関連した重症肺炎や悪性疾患により救命できない症例もあり、さらに予後を改善していくためには、HIV感染症の早期診断が今後の課題であるといえるでしょう。HIV感染症患者では、HIV感染が診断される前に様々な症状で一般医療機関を受診している場合が多いため、各医療機関での積極的なHIV検査が早期診断のカギのひとつであると考えられます。
ここでは、様々な主訴で一般医療機関を受診してくる患者に対して、どのような場合にHIV検査を行うべきかについて解説します。

最初に平成20年診療報酬点数表より、HIV検査の保険適用について基本事項をまとめました。
非加熱血液凝固因子製剤の投与歴がある、昭和53年から昭和63年の間に入院し、かつ特定の疾患を経験していたなどの特殊な例の場合には、自覚症状がなくてもHIV抗体検査が保険適用となります。
それ以外には、両側性の肺炎を発症し、ニューモシスチス肺炎の可能性を100%否定できない状況など、エイズ指標疾患が疑われる場合や、HIV感染に関連しやすい梅毒、クラミジア、淋菌などの性感染症(STD)を診断した場合にHIV検査が保険適用となります。

後で具体的なデータを紹介しますが、HIV感染症患者はHIV感染症と診断された時点で、すでに多数のSTDにも罹患していることが多いです。よって、STD罹患時にHIV検査を積極的に行うことは早期発見につながる可能性が高いと言えます。またHIV検査の結果、感染していなかったとしても、これがHIV感染リスクについての患者教育の契機となりうる点から、検査を行うべき重要なポイントであると言えます。

HIV検査を行うにあたっては、基本的に患者本人の同意を取る必要があることが、平成5年の厚生労働省の通知で明示されています。
ただし、患者が意識不明などの理由で同意が取れない場合には、患者の同意なしで医師の判断によって検査を行ってよいと言及されています。

臨床現場では、本人の同意が取れない状況下で、しばしば患者家族から同意が取得されているケースが見られるのが現状ですが、これは患者のプライバシー保護の観点からは好ましくないと考えられます。原則的に患者家族からの同意はとらず、医師の判断でHIV検査を実施してください。

これは2003年および2004年の2年間で、当センター(ACC)を受診した初診患者を対象とし、HIV感染症の診断契機についてまとめたものです。
VCT、すなわち保健所などでの自発的検査でHIV感染症が診断されたケースは、全体の3分の1を占めるのみであり、残りの3分の2は医療機関で診断されていました。また、全体の約半数は何らかの症状を呈して医療機関を受診し、精査の過程でHIVが判明したものでした。
このようにHIV感染症患者の約7割は、医療機関で診断されているのが現状です。

それでは、一般医療機関でのHIV検査は、見逃しなく十分に行われているのでしょうか?
先ほど紹介した、当センターの初診患者の検討では、73%の症例でHIVが診断される前に、STD罹患などのHIV感染を疑うべき病歴がありましたが、その際にHIV検査が実施され、それが診断に結びついていた症例は全体の20%以下に過ぎませんでした。
つまり、STDや帯状疱疹と診断されても、多くの症例ではHIV検査が実施されていないため、多数のHIV感染者が早期発見のチャンスを逃したのではないかと推測されます。医療機関での積極的なHIV検査の実施は、HIV感染症の早期診断に寄与する可能性があると考えられます。

これは、アンケート調査による全国のHIV拠点病院におけるHIV検査の実施率に関するデータです。
経年的に改善傾向にあるものの、HIV拠点病院であってもSTDの既往がある場合のHIV検査の実施率は、いまだ3割にも満たないという状況です。

エイズを発症する前にHIVを早期診断できれば、HIV患者はほぼ100%救命できます。しかし診断が遅れ、エイズを発症した場合には現在でも救命できない場合があります。その意味で適切な時期におけるHIV検査は、患者の救命とその予後に大きな影響を与える検査であり、その点でほかの感染症検査とは性質が異なっていると考えるべきです。
医療従事者は、救命という観点からHIV検査に関する認識をいま一度新たにし、積極的にHIV検査を行うような意識改革が求められていると言えるでしょう。

米国では、どのようにHIV検査が行われているのでしょう。米国疾病管理予防センター(CDC)は2006年に、HIV検査に関するガイドラインを発表しています。ここでは、その概略を紹介します。
医療機関では13〜64歳までのすべての人を対象に、その人のリスクにかかわらず、全例でHIV検査を行うことを推奨しています。そして、明らかな感染リスクがある人に対しては、最低年一回の検査を実施するとしています。また、このガイドラインでは患者から積極的に検査を拒否しない限りは、検査を実施するというOpt-Out方式を採用しているのも重要なポイントです。加えて、検査実施に際する同意書の取得も不要であり、口頭で説明して本人からの拒否がない限りは基本的に検査を実施するとしています。予防に関するカウンセリングについては、医療機関におけるHIVスクリーニングには不要であるとしています。
このように米国のガイドラインでは、医療機関でHIV感染を積極的に早期発見していく仕組みを推奨しており、感染拡大が懸念されている日本においても、将来的にはこのガイドラインに近いかたちでの検査実施へとシフトしていくことが必要なのかもしれません。


医療機関でHIV感染症を早期発見するポイントを、ここに示す3つのステージに分けて概説します。
まずHIVに感染すると、感染者の約8割は何らかの急性症状を呈すると考えられています。その後、急性症状は軽快し、無症状で経過するエイズ発症前の安定期が4〜8年程度続き、最終的にエイズ発症期に至ります。

はじめに急性感染期での診断について考えてみます。
HIVに感染すると、感染後2〜6週程度で約3分の2の患者は、急性HIV感染症と呼ばれる一連の症状を呈します。しかし、症状からはインフルエンザなどの急性上気道炎との鑑別が難しいこと、そして多くは数週以内の経過で自然に軽快することから、多くの急性HIV感染者が見逃されていると考えられています。

これは、当センターで急性HIV感染と診断された108例でみられた臨床症状、所見を頻度の高い順にまとめたものです。
症状はいずれも非特異的であり、HIV感染に特徴的と考えられる症状はありません。したがって、症状だけで急性HIV感染を診断することはきわめて困難であると考えられます。
いくつかの症状の組み合わせから、積極的にHIV感染を疑ってHIVスクリーニング検査を実施することが診断のカギになります。

急性感染期には抗HIV抗体がまだ十分産生されていないため、従来用いられてきたHIV特異抗体を検出する第三世代のスクリーニング検査では、急性期における陽性率は40%程度でしかなく、急性感染の診断は困難でした。しかし、第四世代のHIVスクリーニング検査では、HIV抗原であるp24と特異抗体の両者を検出することにより、window periodが大幅に短縮され、急性感染期における感度も90%程度と改善されています。
現在行われているHIVスクリーニング検査は第四世代であり、急性HIV感染を疑った場合でもスクリーニング検査での診断が十分可能となっています。しかし、急性期のスクリーニング検査の感度は100%ではないため、急性感染が強く疑われる場合には、1回目のスクリーニング検査で陰性であった場合でも、2〜3週の間隔をあけて再検査を実施することが必要です。

先ほど示したように、急性感染の臨床症状は非特異的であるため、ひとつの症状だけで急性HIV感染を診断することは容易ではありません。ここでは、症状の組み合わせや特定の症状から急性HIV感染を疑い、積極的に検査を実施したほうがよい場合について具体的に考えてみます。
まず、ひとつ目は高熱と強い咽頭痛を呈する場合です。咽頭痛は通常の急性上気道炎でみられる症状ですが、数週間にわたって高熱が遷延する場合には積極的に疑って検査を行うことが勧められます。咽頭痛はかなり強いことが多く、食事がとれなかったり、「これまでで経験したことがない痛さ」と表現されることもあります。加えて、頚部リンパ節、特に後頚部に著明なリンパ節腫脹を認めたり、一過性に発疹が認められることがあります。そのような所見がみられる場合には、急性感染の可能性がより疑わしくなるといえます。

急性感染期の患者の半数程度で皮疹がみられますが、その性状は多彩であり、様々なパターンがあり得ます。ここでは急性感染期の患者でみられた、全く特徴の異なる皮膚症状を2例紹介します。
左の症例では、掻痒感などの自覚症状に乏しい皮疹が全身にみられましたが、1週間ほどで自然に消失しています。一方で、右の症例では非常に強い掻痒感を訴え、皮疹の程度も増悪寛解を繰り返すという比較的慢性の経過をたどっています。急性感染にみられる皮疹は、発熱による発症時には少なく、発熱による発症から1週程度遅れて出現することが多いことも特徴です。

急性感染を積極的に疑うべき2つ目の状況は、無菌性髄膜炎を発症した場合です。
無菌性髄膜炎は、急性HIV感染症の4分の1程度でみられる比較的頻度の高い徴候とされています。当センターで経験した急性感染例64例の解析でも、10例が無菌性髄膜炎を呈していました。特に脳炎を合併し、軽度から重度の意識障害を呈する場合があります。これらの中枢神経症状に対しては、抗HIV薬が非常に有効であり、投与により数日の経過で速やかな解熱と意識障害を含めた臨床症状の劇的な改善が得られることがほとんどです。

急性感染に伴う意識障害が、抗HIV薬投与により劇的に改善した症例を紹介します。
症例は25歳の男性で、2週間前からの発熱を主訴に近医を受診していました。12月30日に突然、重度の意識障害を呈したため、当センターに緊急搬送されています。本症例では付き添った友人から、「患者が男性同性愛者であること」、「HIV感染の可能性が十分考えられる」というコメントがあったことから、急性HIV感染を疑い、入院翌日より抗HIV治療を導入しました。治療が奏効し、翌日から解熱とともに意識障害の劇的な改善がみられています。
本症例では、入院時の第三世代のHIVスクリーニング検査は陰性でしたが、その後、保存血清を用いたPCR検査で急性HIV感染症と確定診断されました。

急性感染を積極的に疑うべき3つ目の状況は、臨床的に伝染性単核球症様疾患が疑われる場合です。
急性HIV感染症では、しばしば末梢血の異型リンパ球の増加がみられ、発熱や咽頭痛、リンパ節腫脹、肝機能異常などEBウイルスによる伝染性単核球症ときわめて類似した病態となり得ます。
伝染性単核球症が疑われるにもかかわらず、EBウイルス、サイトメガロウイルス、トキソプラズマの血清検査で、これらの急性感染が否定的である場合には、急性HIV感染が強く疑われると考えられます。


次は、慢性感染期となった患者で、エイズを発症する前に早期に診断可能なタイミングについて考えてみます。
HIV感染者は、HIV感染が診断された時点で、すでに複数のSTDの罹患歴を有する場合が多いことが手がかりとなります。

HIV感染者でしばしば罹患歴を認める代表的なSTDを示しました。梅毒、淋病・クラミジア感染症、赤痢アメーバ症・肝膿瘍、A型肝炎、B型肝炎、性器ヘルペス、尖圭コンジローマなどがあります。
このなかでも、赤痢アメーバ症やA型肝炎は、海外渡航歴などのある人が汚染された食物を介して感染することが多いため、STDとしてあまり認識されていない傾向がありますが、日本でHIV感染が拡大している男性同性愛者においては、非常に重要なSTDのひとつです。特に赤痢アメーバ症については、異性間性的接触による国内感染例の増加傾向も懸念されており、STDのひとつとして考えるべきです。

このグラフは、当センターにおける男性同性間性的接触による、HIV感染者176例におけるSTDの合併頻度を示したものです。
B型肝炎や梅毒は約70%の患者がすでに感染の既往があり、抗体検査による陽性率はクラミジアで約60%、A型肝炎で30%、赤痢アメーバ症で20%となりました。

梅毒はHIV感染者で特に罹患歴の多い疾患です。二期疹と呼ばれる梅毒疹を主訴に医療機関を受診することが多く、発疹が自然軽快、再発を繰り返すのも特徴です。
梅毒疹は、丘疹から蕁麻疹様の皮疹まで、様々な形態をとりえます。原因不明の皮膚症状を呈する患者では、まず梅毒の可能性を疑って血清検査を行うことが診断のカギとなります。検査の結果、梅毒と診断された場合には、HIV検査を積極的に勧めてください。

クラミジアおよび淋菌感染もHIV感染を疑うべき重要なSTDです。2002年の9月から10月にかけて、当センターを受診した男性同性間性的接触感染によるHIV感染者176人を対象とした横断的検討では、59.7%がクラミジアの感染既往を示すIgAもしくはIgG抗体が陽性であり、2%の患者では尿検体においてクラミジアや淋菌がPCR陽性でした。2例は検討時点で尿道炎の症状を呈しており、淋菌とクラミジアの混合感染であると診断されました。
このようにクラミジアや淋菌は血清学的には高い陽性率を示しますが、多くは無症状で治癒しているのも特記すべき特徴です。治療歴がある、もしくは別の理由で投与された抗菌薬により治癒した可能性が示唆されますが、血清学的に感染の既往がある患者では無症状であってもHIV検査の実施が推奨されます。

赤痢アメーバ症も男性同性愛者における重要なSTDのひとつであり、最近は異性間性交渉においてもSTDとしての感染者の増加がみられています。特に渡航歴のない国内感染の赤痢アメーバ症を診断した際には、HIV感染症の検査を積極的に行うことが勧められます。
HIV感染を合併している患者では、免疫不全を反映して肝膿瘍での発症例が少なくありません。単発性の巨大膿瘍として発症するのが特徴的ですが、発熱以外に症状がないため疑わなければ診断自体がしばしば困難です。フォーカスが不明な発熱で全身状態が比較的良好であるにもかかわらず、CRPは10mg/dL以上の高値を示す場合には、積極的に本疾患を疑い腹部エコー検査で肝膿瘍の有無を確認することが診断のポイントです。

肝膿瘍や原因不明の腸炎症例の場合には、便の塗抹検査を行うことによりアメーバの栄養体や嚢子を観察することが可能です。
栄養体は検体を保温し、すぐに検鏡することで確認でき、サイズは10〜40μmです。アメーバ状で偽足を出して活発に運動し、しばしば赤血球を貧食するのが特徴です。また、嚢子はサイズが6〜20mm。円形状で核は1〜4個であるのが特徴です。


最後に、AIDS発症期を見逃さないための注意点についてみていきましょう。慢性感染期でもHIV感染症の診断がなされなかった場合には、エイズ発症時点で速やかにHIV感染を疑い、検査により確定診断を行うことが、患者を救命するうえで重要となります。
エイズ発症期では、免疫機能の著明な低下から複数の疾患を併発していることも少なくなく、死亡のリスクも高くなります。したがって、HIV感染に特有の日和見疾患を見逃さずに診断し、迅速な治療を行うことが予後を改善するうえで重要となります。ここでは、日和見疾患として代表的な口腔・食道カンジダ症、ニューモシスチス肺炎、結核、カポジ肉腫の4つの代表的疾患について簡単にみてみます。

口腔カンジダ症は、HIV感染による免疫不全で最も頻度が高く早期に出現しうる病態です。口腔内の診察で、特徴的な白苔を観察することで容易に診断を疑うことが可能です。治療も容易であり、フルコナゾール100mgを数日投与するのみで完全に治癒できます。口腔カンジダ症は、高齢者や長期に抗菌薬が投与された患者ではHIV感染者でなくともみられる病態ですが、臨床現場で口腔カンジダ症の患者に遭遇した場合には、HIVスクリーニング検査を実施することが勧められます。
進行した症例では、口腔カンジダ症とともに嚥下時の違和感を訴える場合があります。このような場合には、食道カンジダ症の発症が疑われます。写真は食道カンジダ症の上部消化管内視鏡所見です。

次に、病歴から迅速にニューモシスチス肺炎の診断に至った症例をみてみます。患者は31歳男性で、発熱と労作時呼吸困難を主訴に近医を受診し、入院となっています。胸部単純X線で両側にびまん性のスリガラス様陰影を認め、肺炎が疑われました。担当医が梅毒などのSTDの既往歴があることからHIV感染の可能性を疑い、患者の同意を得てスクリーニング検査を実施したところ陽性が判明したため、HIV感染症に合併したニューモシスチス肺炎が疑われ、当センターへ転院となっています。
本症例ではこちらの写真のようにニューモシスチス肺炎に典型的な画像所見を呈していましたが、実際にはニューモシスチス肺炎は多彩な画像所見を呈しうるため、画像所見のみでは診断が困難なこともまれではありません。しかし、HIV感染を積極的に疑い、HIV検査を行うことでHIV感染症が診断できれば、HIV感染症患者に合併する両側性の肺炎は高率にニューモシスチス肺炎であることが推定可能です。まず、HIV感染症を診断することが、エイズ発症疾患を見逃さないための重要なカギになるといえるでしょう。

次に、4週前からの咳と発熱から結核の診断に至った症例をみてみます。
30歳代の男性が、咳と発熱を主訴に来院しました。喀痰を伴う咳と38℃台の発熱が4週間継続し、市販薬内服でも軽快しないため、近医を受診したところ、胸部単純X線写真で左中肺野に浸潤影を認め、肺炎と診断されました。その後、当センターを紹介受診しました。受診時の現症はこの通りです。聴診では背部左側に湿性ラ音が聴取されました。

胸部単純X線写真およびCT所見をみてみます。左S6を中心に、粒状影を伴う肺胞性の濃度上昇を認めました。

本症例では細菌性肺炎が疑われ、テリスロマイシンが処方され帰宅しましたが、同日提出された喀痰検査で抗酸菌のGaffky2号が判明し、後日PCR検査と培養検査で肺結核の確定診断がなされました。結核病棟に入院後に、主治医の判断でHIVスクリーニング検査が実施され、HIV陽性であることが判明しています。
日本は結核の中蔓延国であり、HIV陰性の結核患者がほとんどであるため、結核を発症した全患者にHIV検査を実施することには妥当性がありません。したがって、本症例のように若年発症例や、病歴にSTDの既往がないかを積極的に聴取することにより、HIVスクリーニング検査を行うべきであるかを個別に判断する必要があります。
結核を発症した場合には、HIV感染症の免疫不全が急速に進行することが知られているため、結核発症時点でのHIV感染症の診断は患者を救命するという点からも重要であると言えます。

HIV感染症患者に結核が発症した場合、特にCD4数が低下している免疫不全進行例では、非典型的な臨床所見を呈することが多くなりますが、逆にそれらの所見がHIV感染を疑うヒントにもなりえます。たとえば縦隔リンパ節腫大の著しい例、粟粒陰影、肺外結核、ツベルクリン反応陰性、胸部X線で所見がない、あるいは乏しい例では積極的にHIV合併を疑い、HIVスクリーニング検査を行うことが勧められます。

最後にカポジ肉腫の症例を提示します。カポジ肉腫は皮膚や口腔内、そして消化管が好発部位であり、特徴的な肉眼的所見により容易に診断を疑うことが可能です。これらのカポジ肉腫の病変を有する症例では、カポジ肉腫のリンパ節病変として局所あるいは全身性のリンパ節腫大を呈することも少なくありません。


以上、一般医療機関においてHIV検査を行うべき手がかりを中心に解説しました。
HIV感染症をエイズ発症前にみつけ、診断することは、その患者の命を救うことにほかなりません。抗HIV治療が進歩した現在においても、エイズ発症後の診断では救命できない予後不良もありえます。一方で、エイズ発症前にHIV感染症を診断し、適切な時期に抗HIV治療を開始することができれば、HIV感染症の予後は良好です。
さらに、HIV感染に気づいていない患者が性交渉などにより感染源となることでHIV感染症が拡大していることを考えれば、HIV感染症の早期診断、早期治療は社会における感染拡大を防ぐことにつながると言えるでしょう。
今後、HIV感染者の予後をさらに改善させ、また日本における感染拡大を抑えるために、医療機関などにおけるHIV検査の敷居を下げ、積極的に検査を行っていく必要があると考えられます。